トップページに戻る
  少年リスト   映画リスト(邦題順)   映画リスト(国別・原題)  映画リスト(年代順)

Das Haus der Krokodile クロコダイル館の秘密

ドイツ映画 (2012)

クリスト・フェルキック(Kristo Ferkic)が単独主演する謎解き冒険物。ダイヤモンド採掘で財をなした大伯父の館に引っ越してきたばかりの一家。両親が仕事で留守をした間に、11歳のヴィクトルは40年前に死んだ大伯父の娘セシリアが残した絵日記の謎に挑む。明らかに家族向けの映画だが、謎解きに無理はなく、如何にも11歳の少女が考えそうなもの。物語の進行も一方通行的ではなく、かなり錯綜している。ヴィクトルは何度も危険な目にも遭うが、突拍子のないものではなく、十分にあり得る範囲。そういう意味で、よく練られた脚本だと言える。元になったのは、ヘルムート・バロット(Helmut Ballot)が1971年に出版した同名原作、及び、それをもとに1976年に作られたTVの30分6回のシリーズ(右の写真)。こうした累積があるので、ちゃんとした映画ができあがった。バイエルン映画賞の最優秀子供向け映画に選ばれている。

90歳の大伯父が老人ホームに移り、空いた2・3階の館に引っ越してきたヴィクトルの一家。両親は、大伯父の誕生パーティが2日後にあるのに、引っ越してすぐに仕事で海外出張。長女は病院務め、次女も外出し、引きこもりがちなヴィクトルが1人古い館に取り残される。そうかといってアメリカ映画のように幽霊や悪魔が出てくるわけではない。何もすることがないヴィクトルは、1階に住む怖いお婆さんや、4階に住む怖いおじさんに会うと、家の中の探索に熱中する。家の中には、大伯父が、若い頃、アフリカ中部でダイヤモンドの採掘をしていた時にハンティングで仕留めた動物の剥製があちこちに置いてあり、両親は一目見てリフォームを考えたくらいだが、ヴィクトルは案外気に入っていた。彼が アフリカの刀を振り回して遊んでいると、突然、黒いストッキングをかぶった男が現れ、ヴィクトルは逃げようとして家具を壊し、その音で、1階の怖いお婆さんが中年の息子と共に飛んで来る。彼女は、「強盗」だという ヴィクトルの主張は、家具を壊したことへの言い訳だと断定し(密室状態)、全く信じようとしない。傷付いたヴィクトルは、大伯父の部屋の中を調べていて、40年前に死んだ大伯父の娘の絵日記を偶然発見する。それは、謎に満ちていて、ヴィクトルの趣味にぴったりだった。ヴィクトルは、絵日記から読み取った1つのヒントから、地下室でセシリアの手鏡を発見する。その夜、再び強盗が侵入し、ヴィクトルの部屋に入ろうとするが、せっかく呼んだ警察も、玄関にも窓にも鍵がかかっていたため(密室状態)、笑い飛ばして帰ってしまう。館内の誰かが強盗だと確信したヴィクトルは、自分で調べることにし、自室の通気口から古い配膳用のエレベーターに辿り着き、強盗はここから入ったと確信する。そして迎えた大伯父の誕生日。パーティ会場で出会ったオーピッツは、大伯父のかつての採掘仲間だった。ヴィクトルは、彼と話しているうち、セシリアの絵日記で分からなかった謎の1つの答えが分かる。そして、屋根裏に行き、宝の箱を見つけることに成功する。しかし、その中に入っていたものは ただのガラス玉だった。一旦は、失望してやる気をなくしたヴィクトルだったが、3度目の強盗の侵入を契機に、事態は思まぬ方向に向かって行く。

ヴィクトルを演じるのは、クリスト・フェルキック(Kristo Ferkic)。1998年8月17日生まれなので、撮影が2011年の8月以降なら13歳、それ以前なら12歳。映画での設定年齢相応だ。子役歴は結構長く、2005年からTVに出演している。映画への初出演は、『Henri 4』(2010)で、アンリ4世の子供時代を演じたのが最初(右の写真)。この作品が2回目の映画出演。日本では、『Die Schneekönigin(雪の女王)』(2014)のカイ役で知られているが、これはTV映画。しかも、もう子役とは言えない。


あらすじ

映画の冒頭、古い8ミリフィルムの映像が流れる。出てくるのは、11歳の少女。映画を間違えたのかと思ってしまう。少女が好きなのは絵を描くこと(1枚目の写真)。題名が出た後、8ミリフィルムの映像が画面いっぱいに拡がり〔上下をカット〕、少女が鏡で顔を見る(2枚目の写真、矢印は手鏡)〔後で、全く同じ映像が出てくる〕。そして、少女の姿が消えると、そのままのアングルで、館だけが残り、色彩が改善され、現在へと移行する。そして、ナレーションが入る。「夏休みの間、両親は、初めて僕たち3人だけにした〔ヴィクトルと2人の姉〕。それは、ちょうど、僕たちが大伯父の館に引っ越してすぐのことだった」(3枚目の写真)「大伯父が老人ホームに入ることになり、父に住居を譲ったのだ。両親は古い家具をすべて処分し、リフォームを考えていた。僕は、そのままの方が好きだったのに。古い家具が好きだから。あの大きな部屋の壁を埋め尽くしていた写真もね。そこで、僕は、初めて君、セシリアに遭った。そして、君の秘密にも…」。
  

ヴィクトルは11歳。部屋の中には、段ボール箱を寄せ集めて作った「隠れ家」がある。ヴィクトルが、その中で本を読んでいると、「ヴィクトル」と呼び声が伝わってくる。聞こえ方が変なので首をかしげていると、声は通気口から聞こえてくる(1枚目の写真、矢印は通気口の蓋、外すと出入りできる)。ヴィクトルが呼んでも来ないので、父が呼びに来る。「なぜ、返事しない」。「本を読んでた。面白いんだもん」。「外の変なもんは何だ?」。「大伯父さんの物」。「古い物を勝手に取ってくるな。私達のものじゃないんだ」。そして、両親の出立。父が、次女に、「弟の面倒を見てやれよ」と言うと、「一日中、段ボール箱の中にいるじゃない」とすげない。母が、「一緒に連れ出したら?」と言ったので、「ピアノ教室、一緒に行く?」と尋ねると、ヴィクトルは即座に否定。「ほらね」。母は、①食費は化粧台に置いてある、②何かあったら1階のデーヴィッシュさんに相談する、③明後日が大伯父グスタフの誕生日だということを忘れないように、の3点を言い残して夫と館を出て行く(2枚目の写真、左が長女ルイーザ、その右が次女コーラ)。2人の姉は すぐにいなくなる。ルイーザは仕事で出かけるのだが、コーラは友達に会いに行くだけ。ルイーザは、弟を一人で放っておくのは良くないと思い、妹に、友達を連れて来るよう勧めるが、「こんな弟 見られたら、みんなから笑い者にされる」と言うので、余程変わり者なのか? ヴィクトルは1人だけになると、ほっと一息。玄関の隣にある部屋に行き、止まったままの大きな振り子時計を動かしてみる(3枚目の写真、矢印)。
  

その後、ヴィクトルは、自分でサンドイッチを作る。食パン、レタス、トマト、食パン、レタス、ハム、チーズ、黒パン、ケチャップ、サラミソーセージ、チーズ、食パンを重ねた分厚いサンドイッチにかぶり付く(1枚目の写真)〔カロリー過多〕。食事が終わると庭に出て遊ぶ。柵の外にある公園では大勢の子供たちが遊んでいるが、出て行こうとしてためらい、結局引きこもって一人で遊ぶことにする。兵隊人形にパラシュートをつけて遊んでいると、落ちた場所のすぐ横が花壇。怖い顔のお婆さんが寄ってきて、「そこは花壇よ」と冷たく注意する(2枚目の写真)。ヴィクトルは、「あっちに行くよ」と言って逃げ出す。すると、玄関からゴミ袋を持って出て来た怖そうなオジさんにぶつかって缶が散乱し、怒鳴られる(3枚目の写真)。ヴィクトルは、外にいるのが怖くなり、らせん階段を駆け上がって「家」に行くと、玄関に鍵を掛ける。
  

ヴィクトルは、「家」の中の探検を始める。大伯父の部屋は、ロックされていて開かない。その時、何か音がしたようなので、「ライオンの絵のタピストリー」が壁に掛けてある部屋に行くと、タピストリーが少し傾いていた〔伏線〕ので真っ直ぐにする(1枚目の写真、矢印が動かす方向)。ついでに、壁に吊るしてあった大きなアフリカの刀をベルトに差す。隣の部屋には、剥製がいっぱい置いてある。赤ちゃんワニの剥製が床に落ちていたので、拾い上げ(2枚目の写真、矢印)、お母さんワニの横に置いてやる。すぐ横に単眼鏡が置いてあったので、壁に掛かっているたくさんの白黒写真を見ていると、中に少女のカラー写真が1つだけ混じっている。他の写真は、アフリカで撮られた物だったので、ヴィクトルは、「女の子を捕まえてるな」と写真に向かって言い、刀を抜いて、「女の子を離せ、さもないと 容赦しないぞ!」と命じる〔もちろん、相手はいない〕。ところが、その時、鏡に黒ずくめの男が映る(3枚目の写真、黄色の矢印は刀、赤の矢印は男)。男はすぐに姿を消すが、誰もいないはずの「家」に異様な人物が出現したことに驚いたヴィクトルは、怖くなって逃げる途中、イスにつまずき、倒れたイスが飾り棚のガラスを割ってしまう。
  

ヴィクトルは、壊れた棚は無視し、自分の部屋に逃げ込むと、「隠れ家」にこもり、弓を引いてドアを狙う。突然、玄関ドアの呼び鈴が鳴る。ヴィクトルは、びっくりして、矢を放ってしまう。呼び鈴の音に加え、通風口からは変な音が聞こえ、ヴィクトルは縮み上がる(1枚目の写真)。呼び鈴に加え、今度はドアが執拗にノックされる。ヴィクトルが恐る恐る玄関ドアまで行くと、外にいた女性は、デーヴィッシュと名乗る。それは、母が言っていた名だし、声からすると、さっき庭で叱られた怖いお婆さんだ。ヴィクトルは、意を決してドアを開ける。チェーンは掛かったままなので、少ししか開かない。デーヴィッシュ:「あの音は何だったの?」。後ろにいた中年男が、「まず、『今日は』か『やあ』が先だろ」と注意する。デーヴィッシュは、それを無視し、「開けなさい」と強硬だ。ヴィクトルはチェーンを外す。男は、「音がしたけど、大丈夫か?」と訊き、「俺は、息子のフリードリッヒだ」と名乗る。「強盗だよ。僕、見たんだ!」。ヴィクトルは強盗を見た場所に2人を案内する。デーヴィッシュが目ざとく見たのは、壊れた飾り棚。「これ どうしたの?」。「強盗がいたんだ。だから、逃げ出して…」(2枚目の写真)。デーヴィッシュは、強盗の話など無視し、壊れた家具を心配する。それが済んで、ようやく、「強盗はどんな格好だったの?」と訊く。黒ずくめだったので、「分からない」としか言えない。フリードリッヒが見回りに行き、誰もいないと報告すると、デーヴィッシュは、「これは、戸棚を壊したことへの目くらまし〔Ablenkungsmanöver〕ね」と断定する(3枚目の写真)。「ドアにはチェーン、窓は全部閉まっているのに、どうやって強盗が忍び込めるの?」。デーヴィッシュはヴィクトルに詰め寄ると、「騙すのは おやめ」と警告する(4枚目の写真)。デーヴィッシュは、後で分かるが、グスタフの義妹〔妻の妹か、弟の妻〕に当るので、館内での全権を掌握しているように威張っている。
   

嫌味な母子が帰った直後、ヴィクトルは “床に落ちていて、フリードリッヒから渡されたサッカー・ボール” を、憤懣をぶつけるように思い切り蹴る。ボールが当った衝撃で、大伯父の部屋のドアが開く。鍵がかかっていたはずなのにと思いつつ、ヴィクトルは刀を手にして部屋の中に調べに入って行く。電球は、スイッチを入れた途端に寿命が切れてしまう。ヴィクトルは懐中電灯を頼りに室内を探索する。まず見つけたのは、床に落ちていた赤ちゃんワニの剥製。先ほど、強盗に遭う前に見つけたものとよく似ている〔2個あることに意味がある〕。次にヴィクトルが注目したのは、その近くの床に落ちていた泥。靴の底から落ちたような形だ〔ヴィクトルは、ここにも強盗が入り、だからドアが開いていたと想像する〕。机の引き出しが開きっ放しになっていて中には「10」という額面のお札が1枚。ユーロかマルクかは分からない〔金銭目的ではなさそう〕。そのまま、ヴィクトルが机の周りを回っていると、着ていた毛糸のセーターの腕の先端が何かに引っかかり、糸がどんどんほつれていくのに気付く。糸は、机の裏に付いた金属装置に引っかかっていた。それを外そうといじっていると、隠された引き出しが自動的に開く。その中には1冊の本が入っていた(1枚目の写真、矢印は本)。中を開いて見ると、絵が一杯描いてある。表紙には、「セシリア・ラロシュの日記〔Tagebuch von Cäcilie Laroche〕」と手書きされている。夕方になり、姉妹が帰ってくる。ヴィクトルは強盗のことを話すが、幽霊扱いされただけ。「幽霊でもなきゃ、鍵のかかったドアからどうやって入れるの?」。「きっと、ドアから入ったんじゃないんだ」。「そうね、きっと煙突からだわ。サンタクロースだったのよ。季節を間違えたのね」。「誰かが、ここにいたんだってば!」。ヴィクトルは、脱ぎ捨ててあったコーラのストッキングを頭からかぶり、ぎょっとさせる。「だから、誰だか分からなかったんだ!」。「それ、私の?」。「そうだよ、臭い」。結局、怒ったコーラにストッキングを取り上げられただけ。「大伯父の部屋のドアが開いてた。床には、靴のドロみたいなものが落ちてた。奴は、机を探したけど見つけられなかった。だけど、秘密の引き出しがあって、僕の忍者セーター〔Ninja-Pullover:発音は、ニンニャ〕が引っかかったんだ」。これに対しても、コーラ:「忍者? まるでガキね」。ルイーザ:「あの部屋には入るなと言われたでしょ」と無関係な批判しか返ってこない。ヴィクトルは、「強盗が何を探してか分かった。秘密の引き出しに入ってた」(2枚目の写真、矢印)と言って、発見した絵日記を見せる。2人とも中を見ようともしない。ルイーザ:「セシリアは、大伯父の娘だった」。「だった?」。「11の時、死んだの」。「なんで?」。「誰も知らない。大伯父は、話そうとしないけど、きっと階段から落ちたんだと思う」。「強盗は、彼女の死に関係あるんじゃないかな」。「40年も前のことよ」。がっかりしたヴィクトルは、写真が壁一面にかかっている部屋に行くと、本を積み重ねた上に危なっかしげに立ち、セシリアの写真を手に入れる(3枚目の写真、矢印)。額の裏には、名前と一緒に、1971年夏と書かれていた。ヴィクトルは、隠れ家に入ると、奥の台の上に、大伯父の部屋から持ってきた赤ちゃんワニの剥製と一緒に写真額を飾る〔ランプのシェードには忍者の絵〕。そして、絵日記を開いて絵を見ていく。絵の中にもワニがいっぱい出てくる。ヴィクトルは赤ちゃんワニの剥製を虫眼鏡で見る〔眼の部分が空洞〕。次いでセシリアの写真の中に映っている赤ちゃんワニを見る〔眼に何か入っている/この時点では、ヴィクトルはこの違いに気付かない〕。ヴィクトルは、絵日記の表紙が厚いことに気付き、刺さっていたピンを抜くと、表紙の裏に1枚の紙が入っていた(4枚目の写真、矢印)。そこに書かれてあったのは、「時は停まる〔Die Zeit läuft ab〕、眼は輝く〔Die Zeit läuft ab〕、クロコダイルは導く〔Das Krokodil fuhrt dich hinab〕、秘密は闇の中〔Mein Geheimnis liegt im Dunkeln〕!」という4つの言葉だった。
   

翌朝、ヴィクトルは螺旋階段の一番上まで登り、真下を見下ろしてみる。絵日記にも同じような絵があった。さっそく絵日記を見てみる。そして、1階まで駆け下り、床に描かれた螺旋状の絵の中心近くに立って、絵日記の絵と比べてみる。絵日記の方では、似たような絵の中心にワニが描かれている(1枚目の写真、矢印)。ヴィクトルは、中心の空白部分を手の平で触ってみると、ざらざらして、引っ掻き傷のようなものが指に感じられる。そこで、壁際に置いてあった鉢の中から細かな黒土を少し取ってきて床に擦り付け、息を吹きかけて余分な土を除ける。すると、ワニの絵が浮かび上がり、ワニの下には1本の線も描かれている(2枚目の写真、矢印は線)。ヴィクトルを線の上を指でなぞり、「クロコダイルは導く」と囁く。そして、線の指す方向を見てみる(3枚目の写真、矢印は線の指す方向)。そこには、ドアがあった。ヴィクトルはドアを開け、地下に降りて行くが、階段を降りた所は柵で遮断され、1枚の紙切れに、「危険〔ACHTUNG〕、冠水〔WASSETSCHADEN〕!」と書かれていた。ここからは入れない。
  

こんなことで諦めるようなヴィクトルではない。すぐに外に出ると、他に地下に入れそうな所はないか片っ端から試してみるが、すべて開かない。敷地の一角に、多くの白布が干してある所があった。ヴィクトルが、体を曲げて下から覗くと、地下への入口が見えて 思わずニッコリ(1枚目の写真)。ヴィクトルは、布をかき分けて穴に向かうが、そこには、苦手なデーヴィッシュがいて、顔を見られてしまう。ヴィクトルはとっさに布の中の紛れ込み、デーヴィッシュの追跡をかわし、気付かれないように穴に入ることに成功する(2枚目の写真、矢印は穴)。その先は、すべり台になっていて、石炭置き場に直行。デーヴィッシュは全身炭の粉だらけになる。そこは、石炭庫だけではなく、奥に向かう通路が伸びている。絵日記を開いて、思い当たるページを照らしてみる(3枚目の写真、矢印は白黒模様の入口)。そして、実際の地下道を懐中電灯で照らすと、そこにも白と黒に塗られた入口があった(4枚目の写真、矢印は白黒模様)。その先は2段の階段になっていて、下の段は一面の水の中。確かに「冠水」している。ヴィクトルは、迷わず水の中に靴を踏み入れる。正面の壁には邪魔な物がいっぱい置いてある。すべて取り除くと、そこには大きなワニの絵が現われた(5枚目の写真、矢印は眼の部分)。眼の部分だけは、煉瓦がはめ込み式になっている。ヴィクトルは煉瓦を引き抜くが、勢い余ってそのまま水の中に後ろ向きに倒れて全身炭の粉に加えて泥水まみれ。それでも何とか立ち上がり、虫のいっぱい出てくる穴に手を突っ込み、一番奥で手に感じたものを引き出すと、それは手鏡だった(6枚目の写真、矢印)。ヴィクトルが勝利に酔っていると、いきなりデーヴィッシュの怖い声が響く。「こんな所で 何してるの?」。どうやら、ヴィクトルが石炭庫に滑り降りて逃げたと考え、安全な通路からやってきて探し回ったらしい。
     

ヴィクトルはデーヴィッシュに自宅部屋まで連れて行かれる。彼女は、出勤前のルイーザは、「ご迷惑をかけて済みません」と謝る。「いいんですよ。子供ってものは、一人にしておくと、何でもしますから。でもね、この館はとても古くて危険なことを お忘れなく。地下室は冠水しています。もし、そこで弟さんに何かあって、叫んだとしてもここまで声は届きません」。「そうですね。よく言って聞かせます。連れてきて下さり、ありがとうございました」。ルイーザは、こう謝って、デーヴィッシュにお引取り頂く。ルイーザ:「いったい何なの?」。「意地悪女〔böse〕だ!」。「心配してくれてるだけでしょ」。そして、「そんなトコで何してたの?」と訊く(1枚目の写真)。ヴィクトルは手鏡を見せるが、反応はゼロ。「これ、地下で見つけた。セシリアのだよ」(2枚目の写真)「彼女、見つけて欲しかったんだ。日記には、まだまだ手掛かりが隠されてる。謎々だよ。これで、秘密が分かるかもね」。「秘密って?」。「なぜ死んだか」。姉は、過剰反応し、「言ってるでしょ、変な空想はやめろって。他の子みたいに外で遊べないの!? もっと普通になれないの!?」と批判する。 姉は病院に勤めているので、ヴィクトルは「病院では人が死ぬの、見るよね?」と訊く。「ええ。でも、みんな老人ばかりよ」。「セシリアは11歳で死んだんだよ」(3枚目の写真)。「なぜ、そんなに拘るの? 40年も前のことよ。もっと楽しいことを考えなさい」。姉は、ヴィクトルを理解しようとしない。
  

夕食の場面。姉は全く料理ができないので、3人で、ピザの大箱を3つ注文する。ある資料では、大箱のピザ1個の平均的なカロリーは2000kcalなので、あまり健康的とは言い難い。姉妹が食べて話している間じゅう、ヴィクトルは身動き一つせず、一点を見つめて座っている(1枚目の写真)。「僕は、君の指示に従ったよ、セシリア。地下室に行って 手鏡を見つけた。でも、どうしたらいい? 手鏡は、次への手掛かりなの? 君の秘密に導いてくれるの?」。ヴィクトルは、写真の部屋の隣に、古い8mm映写機が置いてあったことを思い出す。その横にあったリール入れの箱に1971と書いてあったので、もしやと思い、自分の部屋に持って行き、白い布を壁にとめて映写してみる。それは、映画の冒頭に流れたセシリアの映像だった。その中には、冒頭にあったのと同じ、“手鏡で顔を見る” シーン(2枚目の写真、矢印は手鏡)もあった。ヴィクトルは、映っている手鏡が、地下室で見つけたものと同じであることに気付く。そして、絵日記を開くと、中に、セシリアが手鏡を持っている絵があった(3枚目の写真、矢印)。セシリアの左には梯子、そして、左のページにはライオン、ダチョウ、ワニが描かれているが、背景色が同じなので、1つの空間を意味しているように見える。ヴィクトルが次のページをめくると、そこでは、ライオンから出た光が手鏡に当り、反射した光が宝箱を照らしている。どうやら、手鏡は重要な役を果たしそうだが、場所が さっぱり分からない。
  

その夜、ヴィクトルはセシリアの絵日記の夢を見ていて、物音で目が覚める。ドアの下の隙間から覗くと、誰かが懐中電灯を点けてこちらに歩いてくる。ヴィクトルは、そっと鍵を掛ける(1枚目の写真、矢印は鍵)。その後、ドアノブが2回まわされる。誰かが、ヴィクトルの部屋に入ろうとしている。ドアが開かないので、足音は去っていった。ヴィクトルは、ドアを開けて下の階に忍び足で下りると、姉の部屋に知らせに行くが部屋は空。そこで、何度も「ルイーザ」と呼んで探し回っていると、突然、コーラが現われ、「どうかしたの?」と訊く。「ルイーザは?」。「病院よ。どうしたの?」。「強盗だよ!!」(2枚目の写真)。2人とも悲鳴を上げる。次のシーンでは、呼ばれた警官がテーブルの反対側に座り、“証拠”の泥を手に取って見ている。あまりにも貧弱な証拠なので、警察も熱が入らない。若い方の警官が、「いいかい、これは証拠じゃない、ただの泥だ」と言う。ヴィクトル:「泥じゃないよ! 強盗の足跡だ! 大伯父さんの部屋の絨毯に落ちてたんだ」。年取った方の警官が、「どんな男だった?」と訊く。「昨日、鏡に映ってたんだけど、ストッキングを被ってた。今夜は、音がして、僕の部屋を開けようとした」(3枚目の写真)。コーラ:「きっと、弟をさらおうとしたのよ」。ヴィクトルは、「強盗は本を探してたんだ。そいつは、僕が持ってることを知ってる」と言い、絵日記を見せる。コーラ:「ヴィクトルは、40年前に死んだ “いとこ違い”の日記を見つけたの」。かなり非現実的な内容なので、警官の “本気度” がますます衰える。そして、ヴィクトルが、「日記はセシリアの秘密のキーになってて、強盗は僕に解いて欲しくないんだ。彼がセシリアを殺したのかも」と言い、一気に信用を失わせる。年取った方の警官は大笑いし、若い方の警官はからかっただけ。理由は、①40年前の話、②空想的な犯行動機、③玄関ドアにチェーンがかけてあり、窓が閉まっていたという密室状態の3つ。最後の③を指摘されると、ヴィクトルは、「それなんだ! 秘密の通路があるに違いない」と言い、さらに信用度を落とす。秘密の通路なら、なぜ強盗がそれを知っていたかが問題となる。「きっと、ここに住んでる誰かだよ。だから知ってたんだ!」。これは核心を突いていたが、警官には最後のダメ押しとなっただけ。警官が呆れて帰った後、ヴィクトルはコーラに、「デーヴィッシュに間違いない。あの女(ひと)なら、館の隅から隅まで知ってる。セシリアが死んだ時も、ここに住んでた」と言い、姉にも見放される。
  

犯人はデーヴィッシュだと確信したヴィクトルは、翌日、古いツリーハウスの屋根に隠れ、怪しい動きを捉えようとカメラを構える(1枚目の写真、木の葉をつけた布を被っている)。デーヴィッシュは、絨毯を干して叩いているだけなので、カメラで館の上の方を見ていると、前々日にぶつかった怖そうなゴミ出し男が、こちらを向いて睨んでいるのに気付き、慌ててカメラの向きを変える〔たまたま、窓から覗いていただけ〕。そのうち、男が降りてきて車に乗ろうとする。デーヴィッシュは男を呼び止め、「あっちの方はどうなってるの?」と訊く。「まだだが、ちゃんとやってるよ」。「とっても大事なことなの」。「分かってるって」。デーヴィッシュは、男に100ユーロ札を1枚渡す。そうした会話はツリーハウスの真下に近い場所で行われているので、ヴィクトルは、下を覗いてみようと、カメラを外し、顔を台からせり出す。その瞬間、押し出されたカメラが台から落ちかけ、ヴィクトルは途中でつかみ取る(2枚目の写真、矢印はカメラ)。しかし、体のバランスを崩し、デーヴィッシュが離れた後、そのまま地面に落下。幸い、どこにもケガはなかった。部屋に戻ったヴィクトルは、撮影した写真をプリンターで印刷し、壁に貼る。そして、「彼女は、僕が君の日記を持ってるって知ってる。日記を手に入れようと、あの男に払ったんだ。だから、こいつが強盗だ」(3枚目の写真、矢印は男)「だけど、そこから入ったんだろう? 秘密の通路はどこにあるの?」。ヴィクトルは、セシリアの写真に向かって話しかける。
  

この時、その疑問に答えるように、「コーラ? ヴィクトル?」と呼ぶ姉の声が聞こえる。それは、映画の最初の場面と同じように、聞こえ方がどこかおかしい。ヴィクトルは、声が、背後の通気口から聞こえてきたことを思い出す。さっそく、ナイフを取り出し、ネジを回して通気口のカバーを外す。そして、頭にヘッドランプを付け、“さあ、入って行くぞ” と入口を見る(1枚目の写真、赤の矢印が入口、黄色の矢印はヘッドランプの光)。ヴィクトルは、狭いダクト内を這って進む。終点には鉄の柵。揺すっても動かないので、全力で叩くように押すと、柵は外れて下に落ちて行く。その先は、垂直の大きなダクトになっている。そこは、以前、配膳用エレベーターが通っていたシャフトだった。ヴィクトルはワイヤーをつかみ、足を踏ん張ってシャフト内に入ると、配膳用の出口の扉を開いてみる。するとライオンが牙を剥いている。ライオンを脇にどけると、そこは、「ライオンの絵のタピストリー」のある部屋だった(2枚目の写真)〔ヴイクトルが最初に見た時、タピストリーが真っ直ぐでなかったのは、強盗がここから入ったため〕。ヴィクトルは、シャフト内の鉄梯子を降りていく。すると、フリードリヒの声が聞こえる。「もちろん返済するよ。長くはかからない。1年くらいかな」「ママ? 何も言ってくれないの?」(3枚目の写真、左端がデーヴィッシュ)。「正直に話しなさい! また、借金したのね?」〔フリードリヒの金詰りは大きな伏線〕
  

さっき、姉が、ヴィクトルを呼んでいたのは、大伯父の90歳の誕生パーティが始まるからだった。業を煮やしたコーラが、部屋に入ってきて、間に合うように必死で通気口から抜け出したヴィクトルと対面する、ヴィクトルは埃まみれだ。「いったい どうしたの?」。「ナンで?」。「なぜ、そう秘密主義なの?」。コーラは段ボールの隠れ家を覆っている布を剥がす。そして、ヴィクトルが貼った写真をみつけ、変人扱いする。ヴィクトルは「構うなよ!」と怒る。コーラは、絵日記をつかみ取り、2人で奪い合いになる。その時、もともと破れて挟んであった1枚が床に落ちる〔ヴィクトルは、落ちたことに気付かない→伏線〕。その最中にルイーザが入って来て、争いを止めさせる。3人は、上等の服に着替え、誕生日のプレゼントを手にして庭で開かれているパーティに降りていく。そこには、50名ほどの参加者がいた。3人は、真っ直ぐ大伯父の前に行き、ルイーザが、「お誕生日おめでとう、大伯父さん。私たち、ピーターの子供です」と挨拶する。大伯父の隣に寄り添っているデーヴィッシュは、「あなたの誕生日なのに、欠席なの」と、3人の両親について、意地悪なコメントを口添えする。ルイーザは、「残念だけど、ママとパパは、来れません。『見本市〔Messe、日本語のメッセはここからきている〕』に行ってるんです」とサポート。耳が遠い大伯父は、「誰の『髪〔Hesse〕』だって?」と訊き返し、コーラは、「見本市です」と訂正する(1枚目の写真、矢印は大伯父)。デーヴィッシュは、「日曜日なのに。あなたの誕生日に」と、また嫌味。ルイーザ:「とても大事な見本市なんです」。プレゼントを渡して立ち去る時、ヴィクトルは、デーヴィッシュが息子と話しているのを見る。そこで、すぐに大伯父のもとに行き、「これ、あなたの机で見つけました」と言って絵日記を見せる。中を見た大伯父の表情が変わる。「セシリアが、絵を描いたんです」。そして、セシリアが手鏡を持っているページを開き、「これ、どこですか?」と訊く。大伯父は、それどころではなく、セシリアの思い出が一気に甦り、思わずヴィクトルの頬を撫でる(2枚目の写真)。そこに、異変に気付いたデーヴィッシュが飛んできて、「何してるの? それは何? 渡しなさい!」と割って入る。ヴィクトルは日記を握りしめて逃げる。ヴィクトルは、パーティ会場で、誰からも相手にされない1人の老人に気付く。一方の老人は、ヴィクトルが8人ほどいる同年代の子供たちと遊んでいないことに気付く。「そうか、君も孤独なんだ。私たちは一緒にいた方が良さそうだな」。2人は、なぜか気が合う(3枚目の写真)。そして、このオーピッツという男は、重要なことを話してくれる。①大伯父はアンゴラ〔アフリカ南西部〕でダイヤモンドの採掘をしていたこと、②大伯父は、その採掘で儲けた金でこの館を買ったこと、そして、③オーピッツの名付け子が40年前に死んだこと。名付け子は、セシリアだった。
  

2人は、古いガレージに行く。そして、そこに置いてあった年代物の車の中で、ヴィクトルはオーピッツに絵日記を見せる。オーピッツ:「あの娘(こ)は、“物隠し” が大好きだった。何でも隠すんだ」。ヴィクトル:「だけど、なんで死んだの?」。「その時、私はアフリカにいた。そして、誰もそのことを話そうとしなかった。グスタフ〔大伯父〕はセシリアを守ろうとしていた。だが、病気の10歳の女の子を閉じ込めることなどできない」(2枚目の写真)。「病気だったの?」。「癲癇(てんかん)だった。痙攣(けいれん)を起こすんだ。だが、誰もそのことをあの娘に話さなかった。それが間違いだった。グスタフは義妹〔妻の妹 or 弟の妻〕にセシリアの面倒をみさせた」。「デーヴィッシュさんだ」。「そうだ。彼女は、今みたいにガミガミ女じゃなかった」。「目だ!」。「何だって?」。ヴィクトルは、「セシリアはいつも見張られてると感じてたんだ」と言うと、大きな目が描かれたページを見せる(3枚目の写真、矢印)。ヴィクトルは、さらに、「セシリアは、絵日記の中に謎々を隠したんだ」と言って、宝物の箱のページを見せる。1枚前の手鏡のページには、ライオン、ダチョウ、ワニも描かれている〔前に示した〕。「セシリアはアフリカにいたの?」。「まさか」。「グスタフ伯父さんは、動物を撃ったの?」。「動くものなら何でも撃った。可哀相に剥製にされて、今は、屋根裏で埃まみれになっているだろう」。
  

これは、大きな前進だった。ヴィクトルは、「屋根裏なんだ!」と感激する(1枚目の写真)。外の誕生会では、強風が吹き始め、快晴の天気が急変しようとしていた。ヴィクトルは、誕生会など無視し、そのまま屋根裏に直行する。屋根裏に来てみると、確かに絵のように、中央に梯子があり、その先は窓になっている(2枚目の写真中央と、最初の頃に示した絵日記の写真を対比されたし)。そして、3匹の動物は… 左手の棚の中には確かに埃を被った剥製が置いてある。ヴィクトルは、絵に従い、ライオンが咥えるランタンの上に懐中電灯を挿し込む(3枚目の写真の左にあるライオンの絵)。すると、光は、反対側の木の張り出しを照らし出す(2枚目の写真、矢印はヴィクトル、右の木の張り出した部分に光が当っている)。ヴィクトルは、さっそく光の当っている場所に行ってみる。その部分の木の梁には、上面に細い穴が開いている。絵日記を取り出してチェックすると、ライオンの口から出た光は、手鏡に反射してから宝箱を照らしている(3枚目の写真、矢印は手鏡)。そこで、ヴィクトルは、木の梁の穴に手鏡を挿し込むと、ぴったりとはまる。そのまま鏡を回転させて宝箱らしきものを探すと、上段の棚の上にブリキの箱が置いてある。これに違いない! ヴィクトルは、階段が壊れそうだったので、木の柱をよじ登り(動きにくいので上着を脱ぐ)、そこから、天井を支える太い梁に上がる(4枚目の写真、矢印)。そして、太い梁の上を這うように進んでブリキの箱に接近する。しかし、近づいてみると、箱から1メートル半ほど右には大きなスズメバチの巣があり、ハチが蠢(うごめ)いている。そこで、何とかハチを刺激しないよう、腕だけ伸ばして箱に触ろうとする(5枚目の写真、黄色の矢印は箱、青の矢印は巣)。箱をつかもうとして、ヴィクトルは箱と一緒に床に転落、埃まみれになる。ヴィクトルが高いところから落ちるのはこれで二度目。
    

ヴィクトルが気を取り直して箱を取ろうとした時、ドアを開ける音がして、いきなり “強盗だと思った男” が箱を抱えて入ってくる。ヴィクトルは急いで隠れる(1枚目の写真、矢印は男)。男は、懐中電灯に戸惑って警戒するが、誰もいないのでそのまま作業を続ける。ヴィクトルは、男がショルダーホルスターで拳銃を身につけているのを見て怖くなる。本職の殺し屋かも… 男は、出て行く時、床に落ちていたヴィクトルの上着を回収し、足に当ったブリキの箱を拾う。男は、誰か隠れているに違いないと思うが、その時、救急車がやってきた音が聞こえたので、何事かと降りて行く。安全を見計らってヴィクトルも外に出てみると、救急車には大伯父が乗せられようとしていた。ヴィクトルを見つけたデーヴィッシュは、つかつかと寄って来て、手に持っていた絵日記を取り上げる。そして、「なんで、そう、過去に拘るの? あんたのせいで大伯父さんは興奮して、心臓発作を起こしたのよ!」と一方的に責める(2枚目の写真、矢印は救急車に乗せられる大伯父)。病院まで誰がデーヴィッシュを乗せていくかが問題となるが、全員がアルコールを飲んでいたので、パーティに参加していなかった“さっきの男” が、運転すると名乗り出る(3枚目の写真)。この直後、雨が滝のように降り始める。男は病院に行って当分戻って来ない。箱を取り戻すのは今しかない。ヴィクトルは男の部屋を見上げる。そこは、最上階の4階だった。
  

ヴィクトルは、フード付きの防水ジャケットをはおると、四爪錨をロープの先につけたものを身につけ、3階にある自室の窓から外に出る(1枚目の写真)。鱗状の瓦を葺いた屋根は急勾配すぎて、つかまるのがやっと。ヴィクトルは雨どいに足をかけながら、慎重に進む(2枚目の写真)。2枚目の写真の “屋根が┓型になった部分” まで行くと、ヴィクトルは、四爪錨を屋根の下端に付けられたに柵に向かって投げる(柵は、4枚目の写真右側に映っている)。一旦、柵の上に行けば、この柵が転落を止めてくれる。そして、その先の屋根は緩勾配だ。ヴィクトルは屋根の天辺(いわゆる冠瓦)を跨ぐよう危なっかしげに歩き、男の部屋の開いたままの窓に向かう(3枚目の写真、矢印は開いた窓)。この場面、時折、ヴィクトルの顔を見せ、後はスタントマンが代わりを務めている。目的の窓のある屋根は、また急勾配。だから、雨どいの上を歩くしかない。開いた窓の前まできてホッとした時、足を滑らせるが、とっさに雨どいをつかんで転落はまぬがれる(4枚目の写真)。その後、雨どいをつかんでぶら下がるヴィクトルの顔が映るが(5枚目の写真)、これはもちろん特殊効果。DVDのメイキングでは、同じ場面の実際の撮影風景が見られる(6枚目の写真)。かくして、ヴィクトルは無事男の部屋に侵入できた。
     

ヴィクトルは、男が当分帰って来ないと思い、室内にあったかなり専門的で “犯罪的” なものを珍しそうに見ている。ところが、男は、デーヴィッシュを病院まで送り届けると、すぐに戻ってくる。車のドアが閉まる音で、男が戻ったことに気付いたヴィクトルは、慌てて照明を消す。男は、部屋の窓から見える明かりが消えたことで、侵入者がいると分かり、拳銃を構えて螺旋階段を駆け上る。ヴィクトルが遅ればせながらブリキの箱を探していると、厳重なドアのロックが外され、ドアが開き、漏れ出た光の中に男の影が浮かび上がる(1枚目の写真、矢印は宝箱)。ヴィクトルは男のベッドの下に隠れるが、見つかって引きずり出される。そして、「何のつもりだ? 俺の部屋のベッドの下で何してる?」と叱責され(2枚目の写真)、イスの上に放り出される。「正直に吐け!」。「僕の箱が欲しかっただけだ!」。「箱だと? そのために屋根に登って、首を折る危険を冒したのか? 頼めば済んだことだろ!」。そう言うと、男は、警察の身分証を見せる。男は、「お互い 紹介がまだだったな」と言い、手を差し出して名前〔Strichninsky〕を告げ、「窃盗担当だ」と言う(3枚目の写真、矢印は身分証)。「なのに、君が、私の部屋に押し入るとはな」と、思わず笑う。「俺のボスに言うなよ」と言って、また大笑い。ヴィクトル:「だけど、デーヴィッシュさんのために働いてたでしょ?」。「なんで、そんなトンチンカンな想像をする?」。「お金をもらってた」。「君は、別れた妻より、俺に詳しいな。俺は、何週間も、地下室の水道管を修理しようとしてた。排水用のポンプが必要だった。あれは、そのお金だ。ここは、俺の家じゃないしな」。それだけ言うと、上着と箱を渡してくれる。「中は何だ? きっと大事なものなんだろうな?」。
  

ヴィクトルは部屋に戻ると、箱を開ける。中には小さな缶が入っていて、それも開ける。しかし、その中に入っていたのは、ただのガラス玉だった(1枚目の写真、矢印)。ヴィクトルはがっかりする。「ガラス玉? 信じられないよ! これが君の秘密?」(2枚目の写真)。こう語りかけると、立ち上がり、「僕はバカだ! バカ中のバカ探偵だ!」と叫んで、缶とガラス玉を床に投げつける。その騒々しい音で、コーラが入って来る。そして、大伯父が快方に向かっていると告げる。その後も、大伯父のことを話すが、ヴィクトルは黙ったまま。そこで、「大丈夫なの?」と訊く(3枚目の写真)。「謎々が解けたんだ。彼女はガラス玉を2つ隠してた」。「彼女って?」。「すべてが、ただの遊びだったんだ。バカげたウサギ狩りごっこ〔Schnitzeljagd:兎になった一群のあとを、まきちらした紙片をたどって犬になった一群が追跡する遊戯〕さ」。「何を話してるの?」。「セシリアだよ! 決まってるだろ!」。この言葉で、コーラとの間で大ゲンカが始まる〔コーラは、ヴィクトレルがセシリアに興味を持つことに常に批判的〕
  

ヴィクトルは、セシリアに関わるものを段ボール箱に入れていく… 手鏡も、赤ちゃんワニの剥製も(1枚目の写真、赤い矢印はゴミ箱、黄色の矢印は剥製)、セシリアの写真も、すべてだ」。そして、ゴミ置き場に捨てる。ベッドに横になって考えていると、下を向いた時、ベッドの下に落ちていた1枚の絵に気付く〔以前、コーラとつかみ合いになった時に1枚だけ落ちたもの〕。それは、太陽の中に2匹のワニがいて、その左に振り子時計、右下に仰向けになったセシリアが描かれた絵だった〔2節後に写真がある〕。その時、オーピッツの言葉が頭をよぎる。「グスタフは、アンゴラでダイヤモンドを採掘していた」(2枚目の写真、矢印は絵)。ハッとしたヴィクトルは、急いで捨てた箱を持って来る。そして、セシリアの写真を手に取ってみる。オーピッツの声が響く。「あの娘(こ)は、“物隠し” が大好きだった。何でも隠すんだ」。ワニの剥製の眼を虫眼鏡で見ると空洞になっている(3枚目の写真、矢印は眼)。写真の方には眼がある。「眼だ!」。そして、「太陽は、太陽じゃないんだ」と気付く〔絵に描かれた「太陽」のこと〕
  

その時、変な音がする。今のヴィクトルには、それが、配膳用の出口の扉が開いた音だと分かる。強盗がまたやって来たのだ。ヴィクトルは、今度はドアに鍵をかけず、部屋の電球を外す〔夜なので真っ暗になる〕。ドアが開き、手が伸びてきて、照明のスイッチをONにするが明るくならない。強盗は、やむを得ず、懐中電灯を暗闇に向けて中に入って来る。その瞬間を狙い、ヴィクトルは、セシリアを写した8mm映写機を動かす。眩しい明かりに、強盗がたじろぐ(1枚目の写真、矢印は黒いストッキング)。そこにヴィクトルの声が響く。「あんたが誰だか知ってるぞ。フリードリヒ・デーヴィッシュだ!」。正体がバレていると分かったフリードリヒは、ストッキングを外してコートの中に突っ込む〔伏線〕。フリードリヒは、「いいか、欲しいのは本だけだ」と言いながら中に入って行くと、そこには誰もいない。段ボール箱の隠れ家を壊すと、通気口が開いている。後を追おうとするが、体が大きくて入れない。ヴィクトルは、配膳用の出口から出て玄関から逃げようとするが、そこにフリードリヒが立ち塞がる。「本だ!」。「もう持ってない!」〔フリードリヒの母が取り上げた〕。「嘘だ」。ヴィクトルは、テーブルを挟んでフリードリヒから逃れようとするが、最後には捕まってしまう。ヴィクトルは、つかまれていた服から体を抜き、シャツだけになって逃げる。そして、壁に飾ってあった槍を取ってフリードリヒに向けるが、そこは子供なので、簡単に槍を取られ、逆に槍を突きつけられる。ヴィクトルは、「何が起きたか知ってるぞ」と抵抗する。「セシリアだ。すべて知ってるからな」。フリードリヒは、それには構わず、「君を傷つけたくない。本の在り処(ありか)を言うんだ!」と脅す(2枚目の写真、矢印は槍)。すると、後ろから「本ならここにあるわ」とコーラが言い、フリードリヒが振り向くと、コーラが重い本で顔を一撃する。フリードリヒは床に倒れる。コーラ:「彼が強盗なの?」。ヴィクトル:「そうさ」。その時、玄関ドアが開き、ルイーザ、デーヴィッシュ、オーピッツ、4階の刑事の4人が入って来る。デーヴィッシュは、息子が他人の部屋で倒れているのを見て驚き、オーピッツは、「さてさて、坊や、調査は進んでるかな? どうやら、衝撃的な発見があったんじゃないか?」と尋ねる(3枚目の写真)。ヴィクトル:「彼が、前に話した強盗だよ。それに、セシリアに何が起きたかも分かったんだ」。
  

現場を押さえられても、フリードリヒは言い逃れようとする。グスタフの本を病院まで持って行ってあげようとしただけだと、目的をでっち上げ、ドアが開いていたから入ったと嘘を付く。ヴィクトルに槍を突きつけていたことは、襲われたことに対する自衛行為だと正当化する。こうして、立ち去ろうとしたフリードリヒを、ヴィクトルは「ストップ」と止め、コートに手を入れると黒いストッキングを取り出す(1枚目の写真、矢印はストッキング)。真っ先に反応したのはデーヴィッシュ。「これ、私のストッキング?」と息子に訊く。「洗濯してる時、紛れ込んだんだ」。「ここに侵入する時、いつも頭から被ってた」。「そんなのバカげてる」。「配膳用のリフトから侵入したんだ。もう使われていないけど、フリードリヒは子供の頃から知ってた」。そう言うと、ライオンのタピストリーを引き剥がして開いた出口を見せる。「おかしいじゃないか。なぜ、俺が、こんなところから、侵入しなきゃならん?」。「借金がある。お金が欲しかった。だから、大伯父さんの部屋を、何度も捜してたんだ。とても価値のあるものをね」。そう言うと、隣の部屋に入って行く。「それが何だか突き止めるのに、すごく時間がかかった。でも、セシリアが助けてくれた。そして、紙に書かれた謎の言葉を口にする。「『時は停まる。眼は輝く。クロコダイルは導く。秘密は闇の中』。これが、彼女が日記に書いた言葉」(2枚目の写真)「『眼は輝く』。なぜ眼が輝くのか? グスタフ大伯父さんとオーピッツは、戦争の後、ドイツにアフリカの物を運び込んだ。例えば、剥製のワニ。何の変哲もない。だけど、眼はダイヤモンドだった!」。オーピッツは、それは自分のアイディアだったと話す。デーヴィッシュは、「それが、息子と何の関係があるんだい?」と言い出す。「フリードリヒとセシリアは、ワニから1つずつダイヤの眼を盗んだ」。それを聞いたフリードリヒは、「彼女は、何でも隠した。ダイヤもだ。そして、バカげた謎々を書いてしまい、俺はダイヤを取り損ねた。あんな謎々、俺には分かるはずない」と、詫びずに文句を言う。ヴィクトル:「だから、捜すのは諦めた。だけど、大伯父さんの部屋がリフォームされかけたから…」。「最後のチャンスだった」。この言葉を聞き、ヴィクトルがガラス玉をポケットから取り出して、サイドテーブル置く。みんなは、ダイヤかと思って息を飲むが、刑事が見てガラス玉だと言う。ヴィクトル:「セシリアは、これを見つけて欲しかったんだけど、謎々の一部でしかなかったんだ」。そう言うと、先に紹介した、“太陽と時計”の描かれたページを取り出して、「これが答えだ」と見せる(3枚目の写真、矢印は太陽)。「ここに太陽が描いてある。隣には大伯父さんの時計がある。あの時計だ」。ヴィクトルは、部屋にある振り子時計を指差す。「だから、太陽もこの部屋の中に ないといけない」。フリードリヒは、「この部屋に太陽だと? ついていけないな」とバカにする。ヴィクトルは、シャンデリアのスイッチを入れる。「ダイヤモンドは、ずっとここにあった。40年間。僕らの頭の上に」。そして、シャンデリアの1点を指差す。
  

刑事は、指差された場所に手を伸ばし、シャンデリアを飾っていたクリスタル・ガラスの一部を構成してしたダイヤモンド2つを取り外す(1枚目の写真、矢印)〔セシリアが隠したガラス玉は、この部分に使われていたもの〕。これで、頭の悪いフリードリヒも、ようやく事態を悟る。「ダイヤモンドとクリスタル・ガラスを入れ替えたのか。あの、おてんば〔Luder〕め」。「あんたは、ダイヤモンドを巡って争った」。「一緒に盗んだんだから、1つは俺のだ」。「あんたは頭にきた」。「そりゃ、そうだろ」。「争って、セシリアを階段から突き落としたんだ」。「何だと?」。「認めろよ!」。「俺は、あの日、ここにいなかった! いいだろう、この子は正しい。俺は、ダイヤを捜すため、ここに押し入った。だが、彼女の死には無関係だ! 俺は、あの日、田舎で親戚と一緒だった。目撃者もいる」。刑事は、「デーヴィッシュさん、あんたを逮捕する。強盗、虚偽の公言、および、年少者への暴行だ」と宣言する。フリードリヒが、「くそくらえ〔Leck mich doch〕!」と怒鳴ると、「さらに、侮辱罪だ」と言い、連行する。オーピッツは、「40年も経って。すごいぞ。名探偵の頭脳を手放すなよ」と褒める(2枚目の写真)。ヴィクトルは、「じゃあ、あれが起きた時、ここにいたのは誰?」と、部屋を出るフリードリヒに声をかける。フリードリヒは、「セシリアは、俺の母さんと一緒だった」と言い、それを受けて、デーヴィッシュがヴィクトルを睨みつける(3枚目の写真)。
  

その言葉にヴィクトルは愕然とする(1枚目の写真)。デーヴィッシュがセシリアを突き落としたのだろうか? 真相が知りたい。キッチンでは、ルイーザが、お詫びのデザートをヴィクトルの前に置く。そして、「ねえ、聞いて、あなたに謝りたいの。話を信じるべきだったわ」と話しかける(2枚目の写真、矢印はチョコ・プリン)。ヴィクトルが手をつけないので〔ヴィクトルは、姉の作ったものは怖くて食べない〕、コーラが、「大丈夫、いくら姉さんでもミルクで混ぜることぐらいできるから」と言い、姉は、ミルクではなく うっかり水を入れていたので、慌てる。ヴィクトルは、泣き始める。それに気付いたコーラが、「どうしたの?」と心配そうに尋ねると、「セシリアに何が起きたのか、まだ分からない。彼女は、なぜ死んで、デーヴィッシュさんはなぜ口を閉ざしてるの? さっきの顔見たでしょ? 何かを知ってて黙ってるんだ! きっと訳がある」と、半分泣き、半分怒って主張する(3枚目の写真)。
  

ヴィクトルは、役に立ちそうもない2人にも助けを求める。それは、例の4つの言葉の中に、さらなる手掛かりがないか、というもの。3人は、振り子時計の前で行ったり来たりして考える(1枚目の写真、矢印は時計)。ヴィクトルは、「クロコダイルが僕を暗い地下室に導いた」と言う。コーラ:「でも、なぜ、『時は停まる』なの?」。「セシリアはてんかんだった。きっと関係がある」。「死ぬって知ってたとか?」。「彼女には、病気のことは伏せられてた」。ルイーザ:「それに、てんかんじゃ死なないわ。けいれんは薬で抑えることができるもの」。ヴィクトルは、何度も「時は停まる」をくり返す。そのうち、錘の位置が一番下まできて時計が停まる。ヴィクトルは、それを見て「時計だ!」と言う。「これだったんだ! セシリアの時間じゃない、時計が停まるんだ」(2枚目の写真)。そう言うと、ガラスの扉を開ける。振り子に触ったコーラは、「停まって当然よ、こっちの振り子 軽いもん」と指摘する。ヴィクトルは、軽い方の振り子を外し、裏蓋を取ると、中にはハンカチが入っていた。ハンカチには「C.L.」と刺繍がしてある。「Cecilia Laroche」だ。ハンカチの中を3人が覗き込む(3枚目の写真、矢印は この時点では内容不明の中身)。
  

ヴィクトルは、2人の姉に見送られて玄関ドアから出て行く。そして、螺旋階段を降り、デーヴィッシュの部屋に行く。声をかけても返事がないので、そのまま中に入って行く。デーヴィッシュはキッチンのテーブルに、背を向けて座っている。改めて声をかけると、「何の用?」とぶっきらぼうな返事。「セシリアは病気だった」。「あんたに関係ないでしょ」。「あなたはセシリアを見張ってた。大伯父さんに頼まれたから」。ヴィクトルがキッチンに入ると、「キッチンから出ておいき」と命じられるが、ヴィクトルはそれを無視して中に入る。ヴィクトル:「彼女には、本当のことを黙ってた」。「病気だとは知らなかった。もし話したら、私とフリードリヒを追い出すと、あんたの大伯父に脅されたから」。「セシリアは、どこか変だと感じていた」。こう言うと、ヴィクトルは横に座る。デーヴィッシュは、諦めたように昔の話を始める。セシリアを いつも見張ってたから、嫌われていたこと。ここで、ヴィクトルは、重要な質問をする。「あの日、おばさんは、セシリアに薬を飲ませた?」。「薬は忘れず飲ませてたわ。必ず! やることが一杯あって… 大晦日(おおみそか)だったから。夜、大きなパーティがあり、あの子は、ずっと日記を描いてた」。ここから、当時の映像になる。若き日のデーヴィッシュが、セシリアを捜している。その時、セシリアは、振り子時計のガラス扉を閉めている。そして、螺旋階段を走って登って行く。それに気付いたデーヴィッシュは(1枚目の写真、矢印はデーヴィッシュ)、「セシリア!」と呼びながら後を追う。一番上まで登ったセシリアが、手すりにつかまって下を覗き込んだ時、いきなり痙攣が襲い、セシリアはバランスを崩して転落する。「薬は渡したわ。ちゃんと覚えてる。忙しかったけど、ちゃんと渡した。忘れるはずがない」。「おばさんは、セシリアに薬を渡した。だけど、セシリアは飲まなかったんだ」。そう言うと、振り子の中から取り出したハンカチを拡げ、中の錠剤(10個)を見せる。「大伯父さんの振り子時計の中にあった。彼女が隠したんだ。隠すのが好きだったから」。それを聞いたデーヴィッシュは、初めて笑顔を見せる(2枚目の写真、矢印は薄青い色の錠剤)。デーヴィッシュは、これまで、どうしてセシリアが階段から落ちたか分からず、すべてを自分のせいにして殻に閉じ籠もってきた。しかし、セシリアが落ちたのはデーヴィッシュのせいではなく、本人が薬を飲まなかったから。そして、間接的な原因は、病名を教えることを禁じた大伯父にある。デーヴィッシュの長年の心痛を想い、ヴィクトルは、デーヴィッシュを抱きしめる(3枚目の写真)。セシリアの写真を壁に戻したヴィクトルは、もっと普通の子のように行動しようと決心し、館の木戸を開けて公園で遊んでいる子供たちに向かって走って行く(4枚目の写真)。
   

    の先頭に戻る                 の先頭に戻る
   ドイツ の先頭に戻る             2010年代前半 の先頭に戻る

ページの先頭へ